サッカーのファンは、なぜ「サポーター」なのか?

2017年9月6日

サッカーに熱い想いを寄せるサポーターを徹底解説!

スポーツを楽しむ人はとても多く、自分でそのスポーツを楽しむ人だけでなく、観戦が好きな人、両方を楽しむ人などさまざまです。その中でもとりわけ観戦が好きな人のことをファンと呼びますが、サッカーの場合は「サポーター」と呼ばれることのほうが多く、このことに不思議さを感じる人も少なくありません。

・なぜサッカーだけ「ファン」ではなく「サポーター」と呼ばれるのか?
・そもそもサッカーというスポーツにとってサポーターとはどういう存在なのか?

サッカーに熱い想いを抱き、サッカー文化を支え続けるサポーターについて解説していきましょう。

「ファン」ではなく「サポーター」と呼ばれる理由

プロ野球観戦が好きでひいきのチームがある人のことをプロ野球ファン、また特定のひいきチームがある人のことを「阪神ファン」「巨人ファン」と呼んだりします。ここにサポーターという言葉はまず出てきませんが、これがJリーグなどサッカーになるとファンのことをサポーターと呼ぶのが普通です。

●「ファン」であっても「サポーター」であっても言葉の意味合いは同じ
ファンもサポーターもひいきのチームを愛し、そのスポーツ自体を愛している人たちなので、それぞれのスポーツ文化にとって欠かせない存在です。ファンがスタジアムに足を運んでくれなければクラブチームは経営が成り立ちませんし、選手も大歓声の中でプレイをしたいと思うのは当然のことです。

●「ファン」との大きな違いは地域に根ざしているかどうか
分かりやすいところで、野球とサッカーを比較してみましょう。サッカーチームはそのクラブチームが本拠地としている街のことをホームタウンと呼び、その街と運命をともにするという意識でサッカーに取り組んでいるムードがあります。海外のクラブチームはもちろん、日本のJリーグも同様です。
一方のプロ野球の場合、阪神や巨人など全国的に人気のあるチームは関西や関東などそれぞれのホームタウンだけでなく、日本全国にファンが点在しています。これだとホームタウンと運命をともにするというムードがサッカーほど盛り上がらない部分はあるでしょう。

●チームを支えるから「サポーター」
個人の好みで応援している人のことをファンと呼ぶのに対して、サッカーの場合はスタジアムに頻繁に足を運んだり、特定の選手に声援を送ったり、時には募金活動などで金銭的な支援をしたりと、もっと目に見える形でクラブチームを応援する姿が目立つため、支持者を意味するサポーターという言葉がもっぱら使われているとされています。

サッカー選手はサポーターに育てられる

サポーターと選手の距離感が近く感じるというのは、サッカー文化が持つ特徴のひとつですよね。

日本のJリーグはヨーロッパや南米のサッカー文化を真似て応援スタイルなどが確立してきましたが、すでにJリーグ発足から20年以上が経過し、日本にもそういったクラブチームとホームタウンの一体感が定着してきています。

●喝采と罵声はプレーのものさし
そうした選手との距離感において、南米で特徴的なのはブーイングです。南米のサッカー試合では、ひとつひとつのプレイに対してサポーターが喝采を送ったり、その一方で罵声を浴びせたりします。ひとつひとつのプレイに一喜一憂してサポーターが反応するので、選手は自分のプレイがどう見えているのか、どう評価されているのかがダイレクトに伝わります。
さすがに罵声には品格が感じられないものも多いので感心できたことばかりではありませんが、南米ではこうしたサポーターとの関係性が選手を育てているという意識があります。

有名になった一流選手などがサポーターへの思いを口にする時、喝采と罵声の両方で育てられたと話す人が多いのは、サポーターと選手との距離感に独特のものがあるからでしょう。

多くの分野に広がりつつある「サポーター」という概念

こうした背景を考えると、サポーターという言葉を生み出したのはサッカー文化であることは間違いなさそうです。
ファンが支持者となってチームを支えるという関係性は素晴らしいもので、近年では他の分野でもサッカーのようなサポーター文化を根づかせようとする動きが見られます。

●閉鎖的だった慣習を広くオープンなものに
例えば、一部の政党が自らの支持者をサポーターと呼び、特定の企業や団体からではなく会費のような少額を多くの人から集めることで政治に参加しやすい環境を作ろうとしている動きはその典型でしょう。
同様に、相撲においては特定のタニマチと呼ばれるお金持ちがひいきの力士を育てるという文化が閉鎖的であるとして、一般のファンにサポーターになってもらってより多くの人に応援してもらう仕組みを作ろうとする動きがあります。

●観客と選手が一体となって「チーム」を作っていく文化
最近ではプロ野球の応援団などにもサポーターという言葉を用いているところが見られ、サッカー文化の中から良いものは採り入れていこうという考え方が垣間見られます。
サポーターと選手、そしてチームが一体となって勝利というひとつの目的に向かっていくことがいかに大事か。
スポーツを楽しむ最高の醍醐味ですし、スポーツ以外の分野でもとても大切なことです。今後も「サポーター」という言葉から多様な文化が生まれ、日本や世界に大きく広がっていくことでしょう。