日本のサッカー漫画の影響と歴史

2017年9月6日

日本のサッカー漫画の影響と歴史

日本は世界的に漫画王国として有名で、各国語に翻訳された日本の漫画は世界中で多くの愛読者を獲得しています。
そのテーマには多くのスポーツが取り上げられていて、サッカーも例外ではありません。
なお、サッカー漫画はヨーロッパや南米にもあって、その総数は膨大です。

サッカー漫画の起源は定かではありませんが、試合の模様をコミカルに表現したイラストや風刺画はサッカーの本場であるヨーロッパや南米で19世紀後半からすでに登場していて、日本での登場は1960年代です。
ここでは主に日本におけるサッカー漫画の変遷を挙げていきますが、その作品数は極めて多いので、作品紹介は代表的と思われるものに限定します。

時代と共に進化したサッカー漫画の変遷

1960年代の半ば、日本国内のサッカーには釜本邦茂氏や杉山隆一氏などのスター選手が登場、青春ドラマの題材としてサッカーが取り上げられることが多くなり、サッカー人気が高まりました。
これを受けて、それまでの野球や格闘技を中心としてきたスポーツ漫画に1960年代後半からサッカーを題材とした作品が現れるようになりました。
当時の代表的な作品には「赤き血のイレブン」など。いわゆるスポーツ根性(スポ根)を全面に押し出した作品です。
しかし、このブームは一時期なもので、1970年代初頭以降はサッカーを題材とした漫画は減少しています。

1970年代後半に入ると再びサッカーはスポーツ漫画の新しいジャンルとして勢いを取り戻し、1980年代にはあの伝説的作品「キャプテン翼」が登場、一躍大ヒット漫画となりました。

1990年代に入るとノンフィクション的な傾向が強まり、試合での戦術やユニークなテクニックを描く作品が増加し、1993年のJリーグ開幕と合わせるかのように、プロチームやナショナルチームの活躍がテーマの「俺たちのフィールド」などが登場しています。
また、高校生の年代をテーマとした「シュート!」では以前からの表現が残されていましたが、「ファンタジスタ」では、芸術家タイプの選手をチームの戦術に組み入れています。
さらに、中学生の年代を描いた「ホイッスル!」では無名の選手が努力し成長するという内容の他にルールやポジショニング、心理面など、サッカーの特性についての詳しい解説も盛り込まれるようになり、サッカー漫画の進化を感じさせてくれます。

サッカー漫画発展の裏にサッカー文化の発展あり

1900年代の終盤には、実在するプロサッカー選手の生い立ちを扱った作品も多く作られるようになり、2000年代に入るとサッカークラブ経営を取り上げた作品や指導者のフォーカスを当てた作品が登場するようになりました。

2001年から連載された「ORANGE」では、J2リーグの弱小クラブの1部リーグ昇格までの歩みが描かれており、サッカー漫画の新機軸となりました。
2000年代以降は、インターネット環境の目覚ましい進化で情報伝達力が高まり、目の肥えた読者の要求を満たすために、サッカー漫画は現実的な試合運びや技術に関する表現描写がさらに進歩を遂げています。

サッカー漫画の歴史を見ると、漫画の発展とサッカー文化の成熟が歩調を合わせていることが分かります。

海外サッカー漫画と日本サッカー漫画の比較

サッカー発祥の地、イギリスでは架空のプロサッカーリーグを舞台とした「ロイ・オブ・ザ・ローヴァーズ」が1954年から半世紀近くにわたって連載されました。
また、ブラジルでは1932年にサッカーを題材とした漫画が登場しています。

しかし、どちらも日本の「キャプテン翼」のように世界的な読者層を獲得するまでには至っていません。
やはりこのあたりは、日本のお家芸である漫画のレベルが世界的に見ても圧倒的に高いものだということだと思います。

多すぎ!?日本サッカー漫画の名作たち

海外でも高く評価されている日本のサッカー漫画を紹介しますが、日本のサッカー漫画は数が多く、それぞれが人気で広い読者層を獲得しているので、ここではその一部しか紹介できないことです。
そこで、できるだけ公平な観点から名作と思えるサッカー漫画をピックアップしてみました。

・本格サッカー大河ロマンの「BE BLUES!~青になれ~ 」

・サッカー大好き少年と転校生との絡み合いを描く「俺たちのフィールド」

・弱小プロサッカークラブの監督に就任した主人公が、意表をつく戦略とカリスマ性で、負け癖のついてしまった選手、スタッフ、そしてサポーターたちにパワーをくれる「GIANT KILLING」

・雑用ばかりやらされる毎日にうんざりしていた少年がひょんなことからチャンスを掴んでいく「シュート!」

その他には、「1/11(じゅういちぶんのいち)」や、「Jドリーム」「LOST MAN(ロストマン)」「オフサイド」「エリアの騎士」「サッカーの憂鬱 裏方イレブン」「ANGEL VOICE」「フットボールネーション」「龍時」「さよならフットボール」などがあり、さらにお馴染みの定番と言える作品には、「イナズマイレブン」「イナズマイレブンGO」、新しいところでは「銀河へキックオフ!!」や高校生の年代を題材とした作品の「潔癖男子!青山くん」などなどがあります。

ここにご紹介しただけでも、ほんのごく一部です。
多彩で奥の深い日本のサッカー漫画には、サッカーだけでなく生きていくヒントやヒューマンなドラマを楽しむことができるものも数多くありますから、ぜひ書店でチェックしてみてください!