フィクサーや現役選手、さらには審判まで関与するサッカー八百長の深い闇

2017年9月6日

フィクサーや現役選手、さらには審判まで関与するサッカー八百長の深い闇

日本サッカー界に激震が走った事件として記憶に新しいのが、2014年7月にFIFA日本代表監督に就任し、2015年2月3日に解任されたハビエル・アギーレ・オナインディア監督です。就任期間はわずか半年ほどで、解任の理由はアギーレ監督の八百長疑惑でした。

昔からプロスポーツに八百長騒動はつきもので、プロ野球や大相撲でも八百長疑惑が取り沙汰されたことがありました。サッカーではそのようなことはないと信じたいのですが、実際のところは例外ではないようです。

そこで、世界のサッカー界で実際にあった八百長騒動について見ることにしましょう。最初にひとつだけ述べておきたいのは、サポーターを騙すような八百長は断じて許される行為ではありません。

なぜ「アギーレ八百長疑惑」は3年も経ってから蒸し返されたのか

2015年2月3日、多くのサッカーファンがにわかに信じられない報道がマスコミに流れました。日本サッカー協会が、八百長疑惑で告発されたアギーレ全日本監督の解任を発表したのです。

疑惑の内容とは、2011年5月、スペイン1部リーグのサラゴサが、1部残留をかけた最終戦のレバンテ戦で勝利した際に、当時アギーレ氏はサラゴサの監督を務めていて、八百長試合に関わった疑いが持たれたことです。

時は2010-2011シーズンのリーガ・エスパニョーラ。シーズン最終節の5月21日に行われたレバンテVSサラゴサの試合で、レバンテはすでに残留が決定していましたが、サラゴサが1部に残れるか2部に落ちるかという瀬戸際でした。試合の結果は1-2でサラゴサが勝利し、同じく残留争いをしていたデポルティボがバレンシアCFに敗れたため、アギーレ監督が率いるサラゴサは1部残留が決定しました。

なぜ今、3年以上も前の試合が問題になったかと言いますと、リーガ・エスパニョーラを管轄するプロサッカー協会が八百長を徹底的に排除し、クリーンな運営環境作りを目指したからです。

さらに背景にはもうひとつの理由があり、それはスペイン国内の刑法改正で、この改正ではそれまでは刑罰の規定がなかったスポーツ詐欺である八百長に関する刑罰が決められたからです。

韓国Kリーグの存亡を揺るがした悪質な八百長事件

日本同様にサッカーが盛んな韓国にはKリーグがあります。このKリーグに大きな汚点を残した八百長事件が2011年に起きています。

この八百長事件は、2010年~2011年に韓国国内で発売されているスポーツTOTOで暴力団関係者が仲介者(フィクサー)を通じて現役Kリーグ選手に接触し、わざと負けることを依頼して多額の不正利益を得たというかなり悪質なものです。

フィクサーには現役のKリーガーも含まれており、スポーツTOTOの当選で得た利益の中から成功報酬として八百長を依頼した選手に多額の謝礼を渡していました。なお、八百長と見なされた試合はリーグ公式戦だけではなく、Kリーグカップでも行なわれていたようです。

ちなみにこの一連の八百長に関与した41名については、Kリーグの処分と同時に国際サッカー連盟(FIFA)からも永久追放処分がなされています。事件が悪質であることを考えると、これは妥当な処分でしょう。

アテネ五輪にもあった八百長、しかも日本が「被害者」に

さらに衝撃的なのは2004年のアテネ五輪にからんだサッカー八百長で、これは見過ごせない、ガーナVS日本の試合です。なお、この事件に関する情報はサッカー賭博と八百長問題を追及している調査報道ジャーナリストのデクラン・ヒル氏の著書からの引用です。

この経緯を簡単に整理しますと、日本はグループBで、同組にはガーナ、イタリア、パラグアイがいました。第2節を終え、1位はイタリア(勝ち点4)、2位はガーナ(勝ち点4)、3位はパラグアイ(勝ち点3)、4位は日本(勝ち点0)で、4チーム中2チームが決勝トーナメントに進出できるので、日本以外の3チームに進出する可能性がありました。

最終節の試合は、パラグアイVSイタリア、日本VSガーナで、パラグアイが1-0でイタリアに勝ち、1位での決勝進出を決めていますが、問題の日本VSガーナは1-0で日本が勝ったので、ガーナは3位に転落しました。

この試合のどこが八百長かと言いますと、サッカー賭博では、勝つ見込みが少ないと多くの人が予想するチームに賭け、そのチームを勝たせればフィクサーは莫大な利益が得られます。当時のガーナは勝ち抜けに有利な状況にあり、日本にとっては消化試合ですから、当然公式TOTOのオッズはガーナの勝利、もしくはガーナの勝ちに傾くという利害関係があったのです。

ここで日本代表選手を弁護するわけではありませが、日本の選手が八百長に関わったことは一切ありません。八百長は勝つためではなくわざと負けるためになされるものなので、試合に勝った日本代表は八百長と無関係です。

日本はガーナ戦で勝ちましたが、誠に残念なのは、ガーナが八百長をしなくても日本が勝ったかも知れないことです。
デクラン・ヒル氏が指摘するような八百長は行われたとすれば、日本代表が全力を尽くしてフェアに戦った試合に汚点が残ったことになり、フェアに全力でピッチを駆け巡った日本選手には気の毒なこととしか言いようがありません。

実は審判が最大の「黒幕」?

サッカーの試合を観ていると、あれ!?どうしてあれが反則になるの!または、どうして反則ではないの!というシーンがいくつもあります。
もちろん、審判は神様ではありませんから、時にはミスジャッジをすることはあります。

しかし、残念なことに実はサッカーで最も八百長に関与する、またはしやすいのは審判なのです。一説によると、サッカー八百長のほとんどが審判たちを巻き込んで行われているとも言われています。この説の根拠は審判の収入が少ないことにあるそうで、さすがに主要先進国での話ではないようです。

審判が八百長に加担する方法はさまざまで、ペナルティキックになるような反則を警告で留めたり、またはその反対など。自分の裁量で決められるロスタイムを操作したりすることなども含まれます。

もちろん、サポーターが見てもあからさまに分かるような八百長はしませんが、やる気になれば審判によるこの種の八百長は不可能ではないでしょう。
サッカー界の今後の健全でフェアな発展を期待する際には、八百長にも目を光らせる必要があるようです。